「お菓子は食べさせていないんです」。小さいお子さんにむし歯が見つかって、親御さんがそうおっしゃる。嘘ではありません。本当に、お菓子は与えていない。それなのに、むし歯がある。この事件の犯人は、親御さんの頭の中で「お菓子」のカテゴリに入っていなかった糖分です。
手がかり
食事とおやつを詳しく聞いても、問題になりそうなものは出てきません。乳酸菌飲料も、ジュースも、はちみつも、与えていない。そもそも親御さんは、それらが甘いことを知っているので、与えるかどうかをちゃんと判断している。
そこで聞き方を変えます。「寝る前に、口に入るものは何かありますか」
正体
「喘息のシロップを、寝る直前に飲ませています」
これでした。子ども用のシロップ薬には、もれなく、がっつり甘い味がついています。飲ませるための味です。それを寝る直前に飲んで、そのまま寝る。寝ているあいだは唾液が減り、口の中が洗われないので、寝る直前の糖は、昼間の何倍も効くのです。毎晩、むし歯菌にとっていちばん都合のいい時間に、糖が届いていたことになります。
なぜ気づかないのか
ジュースやはちみつが甘いことは、親御さんも知っています。自分が飲んだことがあるからです。薬は、親が味見していない。だから甘いという認識そのものがない。「薬」という分類に入った瞬間、糖であることが見えなくなる。これが、この事件の本当の構造です。
対処
薬をやめることはできません。でも、飲ませたあとに水を一口飲ませる、それだけで条件は変わります。寝る直前でなくてよい薬なら、時間をずらす。糖の少ない剤形があるか、かかりつけの先生に聞いてみるのも一つです。
教訓
親御さんが「与えていない」と言うとき、嘘をついているわけではありません。分類が違うだけです。だから歯医者の問診は、「お菓子は」ではなく、「寝る前に口に入るものは」「薬は」と、具体的に聞く。むし歯菌は、それがお菓子かどうかを区別しません。糖かどうかしか見ていません。
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