「右の奥歯が痛い」と来院されたのに、むし歯もない、歯周病もない、レントゲンにも何もない。歯医者にとって、ここからが本番です。原因は口の中にないかもしれない。このシリーズでは、そういう「犯人は歯ではなかった」話を書いていきます。
手がかり
30代の患者さん。片側の奥歯の痛みで来院されました。私は最初、歯周炎を疑いました。ところが歯ぐきは健康で、むし歯もない。叩いても噛んでも、痛みが再現しません。
痛みの内容を詳しく伺いました。ズキズキでも、しみるでもない。ピリピリと焼けるような痛みで、歯というより、顔の片側に広がっている。
そこで気づきました。30代にしては、やけにニキビが多い。しかも、痛い側の顔だけに。
正体
帯状疱疹でした。子どものころにかかった水ぼうそうのウイルスが神経に潜んでいて、体力が落ちたときに目を覚ます病気です。顔の神経(三叉神経)に出ると、歯の痛みとしてはじまることがあります。
厄介なのは、皮膚に発疹が出る数日前から、痛みだけが先行することです。だから皮膚科ではなく、歯医者に先に来る。発疹が出はじめても、本人は「ニキビができた」としか思っていない。
見分け方
- 片側だけ。体の正中線をまたぎません。これが最大の手がかりです
- 歯を叩いても噛んでも、痛みが再現しない
- ピリピリ、ヒリヒリ、焼けるような痛み
- 痛い側の顔に、ニキビのような小さなブツブツ
対処は時間との勝負
帯状疱疹の薬(抗ウイルス薬)は、発症から72時間以内にはじめるのが理想です。遅れると、皮膚が治ったあとも神経痛が長く残ることがあり、年齢が上がるほどその危険が増します。歯科でできるのは「歯ではない」と見抜いて、すぐ皮膚科や内科へつなぐことです。
奥歯が痛くて歯医者に行き、「何もありません」と言われたとき。片側の顔に、見慣れないブツブツが出ていないか、鏡で見てください。出ていたら、その日のうちに皮膚科へ。
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